時季外れにてーー桜、福島の三春町 3/城山裏の桃源郷

にわか茶店の婆さまたちに「また来年くっから、元気でね~」と別れを告げ、頂上の広場に上り詰めると、思い描いていた桜の様子と少し違う。

おかしいな…と写真アルバムをさかのぼって確かめると、判明した。五年前にここから南、栃木県北端の芦野という山奥の村を訪ねた折、そこの城跡の広場と勘違いしていたのだった。芦野の「桜ヶ城跡」を訪れる者などあるはずもなく、小鳥たちが啼き交わす声をビデオに収めていたのが、頭の底にあった。

三春の城跡には城郭好きと見える方が目立ったが、桜を探しにきた当方と興味が異なれば、話のきっかけがあるはずもない。

驚きまためずらしく興奮したのは、裏手に回って下りかかると、桃源郷ともいうべき平地が広がっていることだった。丈がごく短い草は緑やわらかく、そこに高低、種類さまざまな桜の木が「各自思い思いに」という風情で点々と配され、枝を存分に伸ばしている。

元は桑畑ででもあったのだろうか、私有地のようなので他所者が入りこむのもためらわれ、お城側の土手の上から桜の園の全体を見渡してうっとりするばかりだった。

あとで立ち寄った写真館の若い女主人は当然地元の方で、この場所を知ってはいたが、元はどう使われていたかはご存じなかった。なお職業写真家の彼女からは、様々な季節と角度から見た滝桜の写真とその撮り方について伺え、たいへん興味深かったものの、「とてもマネはできないや」と舌を巻くばかりだった。その根気と手間をかけることにおいて。

通りに出る手前に置かれた石板が泣かせた。終生この地で過ごされたおふたりの言葉。いま書き写しながら、その単純素朴の底にひそむ深遠さに改めて心打たれ、涙が溢れるにまかせている。

「お城山の麓に/うまれ/しろやまを/かけめぐりてあそぶ/城山のみえる丘に/うずもれん/一九八三年/よしお はな」

ーー。

役場のある大通りに戻ると、バスの停留所に老婦人がひとり立っている。聞けば、郡山行きのバスが間もなく着くだろうと。

この町に入ってくるところで目に付いた食堂で遅い昼飯がてら冷や酒を少しもらおうかと思っていたところだったので、大いに迷った。食堂へ、さらにその先の三春駅まではちょっとした道のりがある。しかもこの日の宿を取った福島駅はまだまだ先なので、早く町を出なければならない…。

しかし結局のところ、空腹と休憩したい気持ちが先に立ち、「ま、なんとかなるだろう」という自己無責任により、食堂『おかもと』へ向かうのだった。

画像


画像


画像


画像


画像


画像


画像


画像


画像


画像


画像





ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック