花冷え――独りということ

ちぢこまってベンチに浅く腰掛けていた。風が冷たい。

すでに日暮れ時。人通りもまばらな川沿いの公園。桜は半ば散った。

ドラッグストアで発泡酒とイカのくんせいを買って独りで花見の図。いや、盛りをすぎた花の下。とても図にならない。

ことしは花が咲きはじめてから陽気が悪かったのか、三回の週末にわたって花見ができたようだ。幾年か前にもこのような花冷えがあったと記憶するが……。

酒を一口すすると、ただただ寒い。酔いたかったわけではない。家にこもっているのにも飽いて外に出たものの、散歩をする気力もない。住まいの窓の下にある公園での花見を名目にしてベンチにたどりついた。

空は次第に暗みが増してくる。たまに前を通る人々や自転車は家路を急ぐ様子だが、すでに人々の表情は見えない。

いつ立ちあがろう……。“イカクン”は、ひと並びしかないのですでに食べきり、缶の発泡酒も残り少ない。飲みきるにはすでに苦くなっている。捨てようかどうか。

しばし惑ったすえ、ベンチの下にこぼし空けて立ち去った。誰も待つ者のいない家に向かって。

別に寂しいわけではない。強がるのでもない。独りは独り。

画像



"花冷え――独りということ" へのコメントを書く

お名前
ホームページアドレス
コメント