「今週,妻が浮気をします」6――なぜ別れなければならなかったか
「やり直そう、俺たち」と言って、くちづけをしようと身を寄せる。寸前、妻の浮気相手の姿がよぎってしまう。それを振りはらいもう一度彼女に近づくが、どうしてもあいつが浮かび上がってくる。「何も言わないで。分かってる」
息子をはさんだ二人の笑顔の写真。あの頃には戻れない……。
「離婚しよう。……好きだから、別れてください」
「別れましょう。わたしもあなたが好きだから」
八年と二か月。結婚指輪は暗い川面に投げ捨てられた。そして始まった男ひとりの生活。朝、おかずなしでコーヒーを沸かし、落ち着かない食卓でひとり、トーストをかじる。見送る者のいない出勤のみじめさ。玄関の電気を消してドアに鍵を掛け、家を出る……。そのわびしさに同情する。筆者も同様。もっともこちらは、共に暮らして二十八年経っていてその状態だったが。
――感傷に流れてしまった成り行き。時が解決できることはなかったのだろうか。言葉によらない、気持と気持のふれあい、思いやりはなかったのだろうか。
妻が浮気をした場合、九割は離婚に至るという現実。逆の場合はどうなるのか。そんな率にはならないに違いない。「男の恥はかき捨て」が許されてしまう風土の問題もある。
離婚しないまでも、妻が浮気したわけでもないのに家を飛び出した筆者にはそれなりの言い訳があるが、男の身勝手であることには違いない。意地でも家に戻るつもりはない。しかし、「捨てられた……」という妻の心情には、同情を禁じえない。が、妻を許せないこともまた確かなのである。これも感情に流されての振る舞いであることは否めない。しかし、どうしようもない。
彼らもいったんは別れるしかなかったのだろう。「陶子のことを思えば思うほど苦しくなる」と思いながら。それを察する。
ああ、男と女はなぜ一緒にならなければならないのか、別れなければならないのか――。
かえって考えられることはないか。ほんらい一緒になれるものではない、とも。
共に生きる、共に生活する。――我慢しかないのだろうか、諸先輩が語るように。それとも逆に、互いに高めあうということもあるのだろうか。普通の夫婦、そういったものがあるのだろうか。無い、に違いないと感ずる。夫婦の結びつきは人ごとに異なるのではないか。それとも、世に言われるように、「幸せな者達は一様であり、不幸なものにはその分だけの種類の不幸がある」のだろうか。
物語はあと一回。ハッピーエンドに終わる雲行きである。安心せられよ。
息子をはさんだ二人の笑顔の写真。あの頃には戻れない……。
「離婚しよう。……好きだから、別れてください」
「別れましょう。わたしもあなたが好きだから」
八年と二か月。結婚指輪は暗い川面に投げ捨てられた。そして始まった男ひとりの生活。朝、おかずなしでコーヒーを沸かし、落ち着かない食卓でひとり、トーストをかじる。見送る者のいない出勤のみじめさ。玄関の電気を消してドアに鍵を掛け、家を出る……。そのわびしさに同情する。筆者も同様。もっともこちらは、共に暮らして二十八年経っていてその状態だったが。
――感傷に流れてしまった成り行き。時が解決できることはなかったのだろうか。言葉によらない、気持と気持のふれあい、思いやりはなかったのだろうか。
妻が浮気をした場合、九割は離婚に至るという現実。逆の場合はどうなるのか。そんな率にはならないに違いない。「男の恥はかき捨て」が許されてしまう風土の問題もある。
離婚しないまでも、妻が浮気したわけでもないのに家を飛び出した筆者にはそれなりの言い訳があるが、男の身勝手であることには違いない。意地でも家に戻るつもりはない。しかし、「捨てられた……」という妻の心情には、同情を禁じえない。が、妻を許せないこともまた確かなのである。これも感情に流されての振る舞いであることは否めない。しかし、どうしようもない。
彼らもいったんは別れるしかなかったのだろう。「陶子のことを思えば思うほど苦しくなる」と思いながら。それを察する。
ああ、男と女はなぜ一緒にならなければならないのか、別れなければならないのか――。
かえって考えられることはないか。ほんらい一緒になれるものではない、とも。
共に生きる、共に生活する。――我慢しかないのだろうか、諸先輩が語るように。それとも逆に、互いに高めあうということもあるのだろうか。普通の夫婦、そういったものがあるのだろうか。無い、に違いないと感ずる。夫婦の結びつきは人ごとに異なるのではないか。それとも、世に言われるように、「幸せな者達は一様であり、不幸なものにはその分だけの種類の不幸がある」のだろうか。
物語はあと一回。ハッピーエンドに終わる雲行きである。安心せられよ。

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