長梅雨のなか、鎌倉散策 3ーー遅い朝メシ昼メシは裏路地のハシゴ呑みにて…

空っぽの胃袋はすっかり “ラーメン待ち受け態勢” になっていた。

三月ほど前、季節はずれの寒さに耐えかねてとびこんだラーメン店では、気の良さそうな中年女性店員さんに「寒い寒いって言いながらバカだよねー」と自嘲しながら、ビールを頼んだものだった。

しかしこの日は何故かそのラーメン店の前を通り過ぎてしまった。前回同様に席はガラガラだったのに。自分で自分が解せない。ラーメン喰いたかったのに…。

若宮通りから小町通りに抜ける路地の中ほど、吉兆美術館の斜向かいに軽く酒が飲めそうな小料理屋が夕方近いのにご飯ものを出すようで、ならばチョイとつまむものも出してくれるだろうと、迷わず引き戸を開けた。

これがまた、近ごろの自分にピタリの店で、月々の墓参の帰りには必ず立ち寄ることになるだろう。

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次回、ご店主との話の種はもう決まっている。ひとつ、干物はどういう火を使い、どういう加減で焼いているのか。ひとつ、ご亭主は二代目に当たられるのか、と。

調理場で「いい鰺だ」と呟きながら焼いていた干物は、それ程によく焼けていて、小さめの頭部の骨はシャリシャリとしながらけっして焦げてはおらずに味わいがあり、残すのは背骨の部分だけだった。分厚い皿も充分に温められており、最後まで冷めない干物がいただけるのだった。

カウンターだけの店、七十年配で小太りのご夫婦の白黒写真が品書きの木札の下にひっそりと置かれていた。数日後、お寺の元住職に父の新盆をお願いし、終えたあとこの店を訪ねたことを話すと。若い頃に店の二階でよく飲んでいたとのことで、愛想よくて働きものの女将さん、職人肌の親父さんはいつも長靴で調理場にいたことなど、懐かしそうに話してくれた。

夜の営業はないとのことで、ご店主が市役所に用がある様子だったので、早めに切り上げて、二軒目を探し始めた。

駅からほど近い路地の奥、さらに不規則なコの字形に曲がった市場のような一角があり、精肉屋や惣菜屋また特徴ある飲み屋が寄り集まった一角があるのは前から気になっていた。飲み屋は概して洒落た造りや賑やかな客が集まっているので、気が進まないが、たった一軒だけ、中の様子はうかがえないながら、ここは純正の居酒屋と踏んで、迷わず引き戸を開けた。これが大当たり。

地元のご常連ばかり集まっているが、初見のこちらを白い目でみることもなく、ごく自然に溶け込むことができる。

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帰りの電車に乗りながら、思えば腹にたまるものを朝から食べていなかったので、横浜駅で途中下車し、『龍王』でサンマーメンを食べてゆくことにした。

…かと言って麺だけというのも野暮なお話。ところが餃子ビールが思いのほか効いてしまい、肝心のサンマーメンは、麺の一部を残すはめとなってしまったのは、痛恨の至りであった。「おれとしたことが……」。

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