旧東海道神奈川宿散歩ーー埋立地の貨物駅、消えた市民酒場から街の中華屋までまで

風呂釜の調子が悪くて二晩ほど湯に浸かれず、全身がだるいので、横浜港東神奈川の岸辺にある日帰り湯を久しぶりに訪ねてみた。

屋内ではあるが外壁が半ばなく、露天風呂ともいえる温泉は、東京から神奈川にかけての海浜部に特有の緑褐色の湯は滑らかで心地よい。

スポーツジムを併設するこの施設は客も少なく、この近隣のベイエリア(イヤな言葉だ)の住民が多いとみえ、一様に常識をわきまえた人間ばかりで、ふだんピリピリしながら街を歩いている当方にとっては、貴重な居場所といえる。

……。

温泉に浸かっては屋上で風に吹かれ、平日の昼間は営業していない食堂で、だれにも邪魔されずに時を過ごしたあと、施設を出れば、入口前のデイゴが元気なこと。
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送迎バスに乗るのもシャクなので、昼食場所を探しがてら東神奈川駅に向かって歩き出せば、すぐに貨物線の駅。「ハマの場末感」が強い。
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外来の草花ではあろうけれど、こんな場所にはふさわしく。
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埋立地が続くこの一帯。情趣もへったくれもないものの、年月が経てばそれなりの味は出てくるもので。
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三階建ての工場の向こうにチラと頭が見えるのは、ランドマークタワー。
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歩くうちに、「そういえば、昼過ぎから開いているあの居酒屋はどうなっているだろう」と、まだ一度しか入ったことがない店を思い出し、向かってみることに。
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ーーと、行き着いてみれば、組み写真右上の状態。影も形もなく、駐車場と化している。二年ほど前に撮った写真を探し、往時を偲ぶ。この時はちょうどお盆で休店中だった。

ごく簡単なツマミで爺さまと婆さまが安く飲ませてくれたと記憶する。

こういう店があると教えてくれたのは、いつも世話になる関内のバー『道』のお客だった。ママさんと中学が同級という彼とは、その後は出会っていないと思う。互いにそれほど常連とはいえないから。

人を待っている風でもなく、ただ道端にしゃがみこんでタバコをふかしているオッサンがいたので、いつ取り払われたか尋ねたところ、二、三か月前かなぁと、ぼんやりした応えだった。
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車道と歩道を隔てる植え込みが一部崩れたのか、土留めとみえる板に、掲示意図が不明な張り紙があった。

よく見ると、細い字で下書きしてマジックインキで清書している、入念な作りなのだ。

水と心を比べて、妙に納得させられる文言。また「正 = 『一』 + 『止』」という字解にも感服してしまった。

加えて興味深いのは、張り紙の破れを止めるために貼り付けられたとみえるパック容器の表示シール紙。拡大して解読すれば、道明寺桜餅四個入りのパックなのだった。

筆跡や内容などから推察して、高齢のおばあさんの作ではないかと。
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梅の実が熟し、根元にいくつも転がっているが、いずれも傷ついており、拾って持ち帰る気がしない。
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『みのかん』跡の近所、橋のたもとにある『土橋寿司』は定休日。仕方なく京浜急行の神奈川駅方面に向かう。駅近くに中華屋があったはず。また、夜は安居酒屋だが昼飯も出す店があったような気もして。

しかし、すでに時間が遅く、どこも開いていない。

歩き回るうちに、これもすでに昼の営業時間は過ぎているが、格好の献立と価格の寿司屋があったので、記録しておいた。勤め人の皆さんが一段落した一時過ぎに行けば、トンカツ定食でビールをゆっくり飲めるだろう。

昨年秋、ある銀行の融資関係で世話になった女性が、この近くの法律事務所で働いていることを思い出した。

銀行での手続きの合間に雑談をしていると、駅前の安居酒屋があることも知っていて、彼女はもちろんまだ入ったことはないが、興味ありげな口ぶりだった。

かなりイケル口のようで、話がはずむうち、驚くべし、この方の実家は以前こちらが住まっていた家のすぐ隣であることが分かるのだった。何たる奇遇。当時、彼女は中学生。今や立派な司法書士さんになっている。
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神奈川駅付近はすべて空振りで、仕方なく東急東横線の反町駅方面に足を延ばす。食事が目的なら、すぐそこの横浜駅付近にいくらでも店はあるものの、人に会いたくないこの日なのだった。

いつもの『菊家』はすでに時間外。さんざん歩いても、適当なところがない。反町駅近くにラーメン専門店は何軒か並んでいても、カウンターで他の客と一緒に同じラーメンをすするのには耐えられない。

厄介なジジイになってしまった。

あきらめて、バスに乗って帰り、自宅で何か作ろうと、とぼとぼ歩いていると、国道から細い道に入ったところに、赤地に白抜きで「ラーメン」という、よく見る旗が立ててある。

マンションの一階に頃合いの中華屋があって、オヤジさんに「いい?」と目顔で尋ねると、「どうぞ」と言う。

ようやく落ち着ける店にたどり着き、躍る気持を抑えて瓶ビールを頼むのだった。
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