疑いーー盗られたには違いなく、島ゾウリ

京都で町家を改造した「ゲストハウス」にふた晩世話になった。ふつうのビジネスホテルにはもう高くて泊まれない。地方都市の相場の二倍はかかる。三年で倍増というところか。

同宿していた隣国の父娘三人のことを昨夜、好意を込めて誰かに記事を書き送った気がするが、探しても見つからず、「あれは夢だったのか」という怪訝さの中にいる。

それはそれとして、今朝、どこかでメシをと思って三条通りを東山駅から西に進み、河原町通りとの交差点にあった『なか卯』でふつうに親子丼を美味しくいただいて宿に戻ると、年来旅先で上履きとして使っている島ぞうり(沖縄のビーチサンダル)が見当たらない。

たまたま朝の掃除に入っていた小柄な老婦人に尋ねると、そのような履物は見ていないという。

仕方がない。部屋に上がってクーラーの風を強くして涼んでいると、彼女が「これでしょうか…」と持ってきたのは、薄ぎたない男物のスリッパだった。

今から思えば、それは同宿者の男が履いていたものではなかったかと。昨夜は彼らしかその宿におらず、わたしが朝飯に出ている間に宿を出ていたのだから、自分のは捨てて、代わりにわたしの島ぞうりを持ち帰ったのではなかろうか。

ーー貧弱な脳みそにはそのくらいの推測しかつかない。あくまでも疑いである。

ゆうべ、手洗いに降りると、黒いTシャツに短パンの中年男がカップ麺の出来上がりを待っているところだった。

お互いの旅程を聞き交わし、写真を見せ合い、生活を語り合ううちに、クーラーのない台所で超特大の味噌ラーメンを啜り終えた相手の汗がひどいので、あわてて別れてそれきりになっていた。

あいさつして互いにカタコトで話すうちに懇意になったと思っていたこちらが甘かったのだろう。

慣れ親しみ、旅先での苦労と楽しみを共にしてきた草履がなくなっても、不思議なほどに惜しいとは感じず、盗られても口惜しいと思わない。また、「あの国の人はそれが普通なのか」と決めつける乱暴さなど、さらさら持ち合わせない。とはいえ、静かな諦めと軽い蔑みの気持ちが一、二時間ほど続いたことは確かだった。

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