おらがソバーー東神奈川駅上り線ホーム『日栄軒』

もともと立ち食いソバを好む。外出したとき、立ち飲みでウーロンハイとイカ納豆などで景気をつけたあと、町の中華屋でふつうのラーメンにするか古い蕎麦屋や立ち食いソバ屋を探すかでいつも悩んでいる年金暮らしの身なので。

数ある立ち食いソバ屋のうち、いま最も好んでお世話になるのが、JR 京浜東北線の東神奈川駅構内にある『日栄軒』。大正7年創業をうたっているが、べつにその古さに惹かれているわけではない。

なによりその汁の味と香りが奥深い。ただ塩からいだけや、化学調味料風の味の店がほとんどのこの業界にあって、クセもトゲもない醤油本来の強い旨味と味わいで、いつも躊躇いなく汁を飲み干してしまう。この点、さいきんはご無沙汰しているが、昭和40年代半ばから鶴見西寺尾にある『豊年屋』の汁に通ずる。店構えが安直であることも同様。

その汁がどこでどのように拵えられているか、おそらくすべて65歳以上のおばさん達とまだそれほど馴染んでもおらず、聞き取ることもできないが、「大正7年創業」の伝統が効いているのだと思いこんでいる。

茹でられたものを温めて供されるソバそのものの味わいについては、そもそも蕎麦通ではないので、何とも評することはできない。「自分で茹でる乾麺のほうがツルツル感は強いな…」という程度で。蕎麦粉2、小麦粉8くらいに違いない。いや却って、あのモソモソ感は、食べ進めるにしたがって汁が適度にしみるから良いものだとも思っているのだが。

寒風に吹きさらされながら立って掻きこむ熱い蕎麦は、落語の「時蕎麦」で語られる江戸風情のとおり、蕎麦切り本来の食べ方ではないのかーーと負け惜しみを言っておく。

よほど金のないとき、または、汁の味だけが欲しいとき、日栄軒では掛けソバ(290円)を頼むが、ふつうに腹と味覚を満たそうとするときには、たぬきソバ(関東だから天かす入り。340円)ーーたしか昨年12月から20円値上げになったーーの食券を買う。

この天かすがじつに深い味わいで、口福を覚えさせてくれる。以前は揚げカスそのものを載せていたのだが、このごろは、それを圧縮乾燥したようなものに変わっている。汁にほとびれば食べ心地は同じなのだが、少し寂しい。

かき揚げソバを頼んだことはない。油分を補給し、味覚を満足させるためには、天カスで充分。かき揚げに使われる野菜など、大した量ではないと思っているので。

ーーどうでもよいことをこの様に綴っているうちに腹がすいてきた。夜も更けてきたので、香港製の「蝦子麺」でも茹でほぐすか。茹で汁に独特のエビの風味があってそのままスープになり、醤油をチョロリと足すだけで十分に美味いのだ。


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