「ご当地グルメは東京と地方とどちらがウマい?」寸見――たこ焼き・すき焼き・チャーハン・豚丼

ひさしぶりに青木裕子ちゃんのアシスタントに出くわしたのと、なにより、料理の作り方がじっくり見られそうだったので、この身にはめずらしく2時間番組をフルに見てしまった。

パート1<たこ焼き> 
「銀だこ」が、焼き上がりに油を全体に多く回して表面をカリカリに焼くことを売りにしているらしい。また、生地に干しエビや青のりなどを入れて、それだけでしっかり味がついており、しかしその分、3個を超えて食べると飽きが出てくるという。ソースをつけなくても食べられるほど味付けがしっかりしている、いや“しっかりしすぎ”なのであろう。

しかし、大阪〔甲賀流〕はそんな面倒なことはしない。山芋粉を入れた生地を、千枚通しを両手で信じられない熟練の技で使って焼いていくだけ。とはいえ、材料は吟味厳選している。蛸は寿司屋で使えるほどの上質。山芋のおかげでトロトロふわふわの口触り。甘めのソース、本格の青のり。「旨いものをいくつでも食べられる」。幸せの持続がある。

〔甲賀流〕の圧倒的勝利だった。〔銀だこ〕の社長と営業本部長の誠心からする謙虚な態度に好感が持てた。本場大阪の雄に対して400店チェーンのがもつ尊敬の念がすがすがしい。


パート2<すき焼き> 
すき焼きの東西対決。ともに創業144年の東京日本橋対京都木屋町は、京都に軍配が上がった。決め手は、第一に、最初の一枚の肉の美味さ、第二に締めの洗練具合の差だったろう。

関西のすき焼きは、はじめに鍋にザラメを敷き、その上に肉を並べてしばし、少しの割り下をかけて両面にからめる。この旨さと言ったらない。自分でも試すことはあったし、今回あらためて見ても、それは確信できる。最初から割り下で煮る関東風は、牛肉の美味さが外にしみだしてしまう。恐れずに言えば、ぞんざい? 京都の女将から「最初の一枚が勝負のしどころ」との発言があったのは、その先の事実を予言していた。野菜などの具の煮方は東西同様。

さらに異なるのは、鍋の総じまいであるシメの違い。東京はご飯を入れておじやにするというごく普通のやり方。旨さは分る。しかし家庭のそれ以上に出ることはなかろう。京都はうどんを入れて鍋に残った味を全体にまぶし、九条葱を散らし、山椒が多めの七味唐辛子を振りかけて食していた。純白のツヤツヤと光るうどんが煮汁を吸って旨そうな褐色に染まっていくいく過程は、見せた。

なべて、東京のすき焼きには“変化”がない。京都のは、手を尽くしている。メリハリがある。様々な調理法と素材の競演がをひと鍋の中で繰り広げられる。その違いはたんに店の歴史を越えた、“町の歴史”によるものなのだろう。順当な結果だった。


パート3<チャーハン> 
チャーハンが横浜のご当地グルメであるかどうか、はなはだ疑わしい。あまりにも日本全国に広まっているものだから。だから、下の事情からしても、この“勝負”には疑念が残った。

“チャーハンそのもの”をトコトン追求した東京の新参店〔チャーハン王〕と中華街の古参〔状元楼〕の勝負は、割り切れぬものがあった。チャーハンに関する歴史と考え方が異なりすぎる。ほとんど具なしの東京と、贅沢な具を加える横浜のチャーハンが、同じ土俵で戦って、果たして勝負になるのだろうか。もしかして、チャーハンに関する思い入れの深さと目に見えない材料の吟味と、独特の調理法から、東京が勝つ可能性も考えられる。そうなってしまったら、横浜中華街の権威の失墜は目に余るものがあるだろう。それは見たくはなかった。「チャーハン」そのものの作り方への情熱において、東京が勝っておかしくない。しかしそれでは“困る”。

結果は2対3ほどの割合で東京の敗退。しかし、中華街相手に大変な善戦である。店主は試合に臨んでは「勝つしかない」とうそぶいていたが、この結果に、予想外の票が集まったことで素直に感動している様子だった。おめでとう。


パート4<豚丼> 
北海道、田中義剛のつくる豚丼は、じつに旨そうだった。ことにタレに通した豚肉を炭火で焼くときに滴り落ちる脂と、醤油ダレの焦げの混じり加減において。見る者の野性をあおる圧倒的な魅力だった。ガツガツ、ワシワシと喰らう快感を呼び起こす。豚丼――。北海道で生まれた丼の意味はそこにあるにちがいない。素材の純粋と単純な調理が生み出す丼。野趣と豪快さあふれる料理。

対戦相手の上品な東京豚丼――上等な豚の肩ロースの薄切りをフライパンで軽く炒めて優しいタレをからめるだけ――の作り手は、田中の作り方を指して、「炭火で焼くことによる焦げ味が豚肉の味を損なう」ようなことを言っていたが、それは、食い物の美味さと魅力についての一面でしかない。その証拠に、後刻じっさいに田中の豚丼を口にして、社交辞令でなく感心していたではないか。洗練だけが料理ではない。

しかし結果は東京豚丼の勝利であった。都道府県代表の票は2対1の割合に分かれた。それほど、東京の豚が上質だったのだろう。しかし、釈然としない勝利であった。その豚肉、金ナントカ豚さえ手に入れば誰にでもできそうな豚丼だった東京。材料の良さだけに頼った、なんの面白味もない調理。

田中の敗因として、豚の上にチーズを散らし、バーナーで溶かし、焦げ目をつけたのが余計だったとの意見があった。なるほど、豚丼本来の野性を自ら矯めてしまったのか。代わりに多めの白髪ねぎだったら、勝負はどうだったかわからない。


(2013年8月6日TBSテレビから・・・ごちそうさま)



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