「お好み焼き」。生きた響き――喰欲ドラマ「孤独のグルメ」第9 話

鉄板の上でカキやホタテの材料に油がからみ、弾け、ニンニクや香草の香りをまとう姿のアップ映像は壮観だ。主人公・井之頭の言葉、「鉄板焼ってライブ感あるんだよな。一人なのに、頭の中、いちいち大歓声というか…。鉄板はステージだ、舞台だ」。

今回の挿話は、劇団での活動に自信をなくして、座長に叱られ、プチ逃げして下北沢の街をブラつき歩く若い劇団員とのやりとり。

劇団を飛び出した彼女を偶然見つけ、そのあとをつけることになるが、それを相手に覚られたら喫茶店に誘うしかない。他人にたいしては不器用で無口の彼。気の利いた助言も励ましも言えない。黙り込む二人。「不思議な方ですね、井之頭さんって」。しかたなく、ろくに話もせずに一人立ち去る。この街で買った、食べさしのタコ焼きなどを彼女に渡して。

「何か言ってあげたいんだけど、思いを言葉にするって難しいな。……ああいうとき、なんて言ってあげるのが大人として正解なのかな」。でも彼が残していったタコ焼きや「ニックンロール」を口にした彼女は、もう、芝居対する不安を忘れ、にっこりしてさえいた。人間なんて単純なものだ。なんだか、はかないけれど、事実。食えば元気が出るという真実。

さて、井之頭が鉄板焼を頼んで出てきたのは、まず、タコの広島葱と柚子ポン酢、ホタテのガーリック焼、カキの香草バタ焼。味付けは、素材ごとにお好み。したがって「順列組み合わせ」の数の種類があることになる。3×3×3の27種類の組合わせ。恐るべし、鉄板焼。

それからこの店HIROKIのスペシャルお好み焼(イカ、エビ、ホタテ、しそ)を注文。

広島風お好み焼きは作る過程が複雑だ。溶いた粉を薄く延ばした上に、大量のキャベツ、豚三枚肉などをのせる。返して豚肉に火を通す。別に焼いておいたソース焼きそばの上に前に焼いたものをそっくり乗せ、ソースとマヨネーズなどで味付け。画面には出てこなかったが、このほかに、鉄板に玉子焼きを薄く作っておいたのをのせる工程があったはずだ。

たびたびの「返し」の技には、ほれぼれする。注文は絶え間なく入ってくる。それに応じて各種の段階の焼く作業が数枚分、同時並行的に鉄板全面を作って繰り広げられる。海鮮の焼き物同様、激しいライブだ。

「お好み焼き。いい名前を付けたもんだ。お好みを、お好みに・・・」とつぶやきながら後ろ姿が遠ざかってゆく。


HIROKI
http://tabelog.com/tokyo/A1318/A131802/13001391/



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