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help リーダーに追加 RSS TVドラマを観る――“不機嫌な果実”と“ランチの女王”

<<   作成日時 : 2006/06/09 04:42   >>

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これまでテレビドラマは、まず観たことがなかった。恋だ愛だ、不倫だ浮気だ――そういった、人の世の、男と女のドロドロした関係は、現実の問題に比べたら、他愛ないもので、そんな架空の「劇」よりも「現実」に対処せねば、というもったいぶった理由をつけることもできる。しかし、じつは何のことはない。女房子供の前でテレビを見ながら涙をこぼしたり、女優さんの表情に見入ったりする姿を見られたくなかったのであった。

独り暮らしになって友人からテレビを譲ってもらったので、み放題に観ている。折りしもウツ状態で勤めから退き、家にこもっていたこともあった。一人黙り込んでいると、気持ちはなおさら落ち込むばかりだったから……。

なるべく罪のない、刺激がない番組を、と思って、朝のTBSテレビ、“はなまるマーケット”をつけていた。それが終わると、突然、女性が裸体で腹ばいになったところを花弁が覆った場面が出てきて、ただならぬことに驚いた。しかし、もとより家には私しかいない。観てしまえ――。

石田ゆり子主演“不機嫌な果実”(※1)の再放送。調べたら97年に放送されている。貧寒な夫婦生活、男とのときめきの時――それは、これまで自分がテレビで見ることができなかったもの。映画を観ることからも遠ざかって三十年経っている。そして、なんと自分の人生と重なることか。男と女を入れ替えれば、彼女の思いと行動は、自分のそれだった。
(※1 http://www.tbs.co.jp/drama_archive/fukigen/index-j.html

偶然、そのドラマの第一回目放送に出くわし、翌日も、翌々日も、待ちかねるようにチャンネルを合わせた。もともとその女優さんが好もしかったこともある。最終回の日は、残念ながら、もう、ウツ状態も引いてきたので、知り合いに録画を頼んで勤めに出ていた。

そのハッピーエンドといえる結末は納得いくものではなく、それまでの展開からすれば、むしろ落ちぶれた人生をたどる彼女を見たかったものだったが、それに至る過程には引きこまれるところが多かった。なにより彼女の時々に見せる表情の変化に惹かれていた。あるときは遣る瀬なく、困惑し、心配し、不安になり、慌てて、和んで……。人にはこのような感情があるのか。自分は何と平坦で無表情な日々を送っていることか――。

そんなことから、石田ゆり子さんの日記風エッセーなどを買い求め、鬱屈した日々、その“ここちいい毎日”の生活の自然さを、彼女の素直で自立した人生観をかいま見て、清涼剤を得た思いがしている。

それは、しょせんテレビドラマの中の出来事であったが、現実の彼女の生活のあり様とも併せて、思い屈している自分の生活に刺激を与えるに充分であった。

  ***   ***

再びウツ状態に陥り、落ち込んでいた昨日、“ランチの女王” (※2)の再放送が目に入ってきた。竹内結子が主演する下町の洋食屋の物語。すでに最終回を迎えていた。
(※2 http://www.fujitv.co.jp/jp/b_hp/lunch/

いつまでも変わらぬものを作り続けることが、人々をどれほど幸せにしているか。オムライスが、カレーライスが、それをいつもの店に食べに行く人を、いかに一時なりとも慰め、気持ちにゆとりを与えていることか。そして、人々の生活の一部になっているだろうか。

それは洋食屋の兄弟と、突然押しかけた主人公の間の三角関係の物語で、恋愛の結末までには至らなかったものの、その画面に表れる「家」の温かさとなごやかさは、それを捨てた己の姿を思い合わせ、涙を禁じえなかった。また、ゲーテの言葉であるという「涙とともに食べた人にしか、人生の味は分からない」という、番組の最後の字幕は、そのドラマから離れ、直截に自分の思いを、いまも震わせ続けている。

どうして、それを放送しているときに観ていなかったのか、悔やまれた。そして、これまでの自分のテレビドラマに対する態度が見栄と虚勢だったことを、あらためて覚るのだった。

正直に自分を表に出すようにしよう。いちど限りの人生なのだから。――何度このことを思っても、そのとおりに行かない己というもの……。

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